第1章:ピザ業界“三国志”の現在地
日本の宅配ピザ市場は、ドミノ・ピザ、ピザーラ、ピザハットという3強が長らく覇権を争ってきた。ドミノは圧倒的な宅配ネットワークと価格戦略で、ピザーラは「ピザはピザーラ」のテレビCMと国産志向で、ピザハットは一度低迷したものの、近年再起を図る動きを見せている。そんな中、“第四の存在”としてじわじわと存在感を放っているのが「ナポリの窯」だ。全国に名を轟かせているわけではないが、食べた人からの評価は高く、“知る人ぞ知るピザチェーン”として根強い人気を誇る。
第2章:価格とメニューの“文法”から外れている
ナポリの窯の一番の異端性は、価格とメニュー設計にある。ドミノやピザーラが「1枚買えば2枚目無料」「クォーターでいろいろ食べられる」などの“ボリューム&バリエーション戦略”を打つ中、ナポリの窯はあくまで“単品勝負”。トッピングの種類も尖っており、炭火焼チキンや本格イタリアン食材をふんだんに使ったピザが中心。「お得感」ではなく、「味で納得させる」構えだ。セット販売やポテト・サイドメニューの押し売りも控えめ。ガツガツしていない。だがそれがいい。
第3章:メディア戦略は“ない”のが戦略?
ナポリの窯は、テレビCMも派手なプロモーションもほとんど打たない。大手2社がスポーツイベントやアニメとのタイアップを積極的に行う中、ナポリの窯は「地味に、だが確実に」地域に根を張っている。FC展開も過剰に拡大せず、直営比率を高く保ち、品質と店舗運営のコントロールを効かせているのが特徴的だ。過去に『カンブリア宮殿』で取り上げられた際には、「こんな本格派があったのか」とネットで話題になったほど。メディア露出ゼロではないが、戦略的な“静けさ”がある。
第4章:なぜナポリの窯は“全国展開”しないのか
なぜナポリの窯は全国に拡大しないのか? その答えは、“味とオペレーションの維持”にある。セントラルキッチン依存度を抑え、店舗ごとにある程度の裁量を持たせているため、急拡大すると品質がブレやすい。かつて全国進出を試みたが、後に一部撤退している。デリバリーアプリに依存せず、自社サイト経由での注文を重視しているのもその一貫だ。逆に言えば、出店している地域では“選ばれた街”として存在感を放っている。
第5章:ナポリの窯は“これからのフードチェーン”なのか
大手のように資本力とCMで押し切るやり方ではなく、地域密着・味勝負・静かなファンマーケティングという独自路線で戦うナポリの窯。その在り方は、チェーンビジネスが“均一性”から“選ばれたローカル性”に価値を見出す時代において、先進的とさえ言える。宅配ピザの業界にあって、ナポリの窯はある意味「異端」だ。しかしその異端性こそが、今後の飲食チェーンに必要なヒントを内包しているのかもしれない。
あなたの街にナポリの窯があるなら、それは幸運かもしれない。