Uncategorized

徒歩5分で何でも手に入る時代、ピザは“わざわざ食べたいもの”になれるか?

投稿日:

① まいばすけっと無双:都市の「食地図」が塗り替わっている

「うちの最寄り駅、まいばすが3軒ある」
そんな話が、もはや珍しくなくなった。

首都圏に住んでいれば、最近やたらと“赤い看板”を見かける機会が増えたと感じている人も多いだろう。
イオングループの小型スーパー「まいばすけっと」が、コンビニ跡地を中心に猛スピードで増殖しているのだ。

2025年2月時点で1200店舗超。これは下手なコンビニチェーンよりも店舗数が多い。
24時間営業ではないものの、朝7時〜夜11時まで営業し、生鮮も惣菜もそこそこ揃っていて、しかも安い。
もう「ちょっと食材が足りないからセブンに寄って……」という流れが変わりつつある。

今、“最寄りの店”の主役が、コンビニから小型スーパーに交代し始めている。


② セブンの牙城が崩れ始めた

実はこの流れに、最も危機感を覚えているのが「セブンイレブン」だ。

ある都内のセブン加盟店オーナーは、こう語る。
「正直、まいばすけっとが一番イヤなんです。近くにできると一番売上が落ちる。」

まいばすは、生鮮品を含む“簡易スーパー”である。
価格も安く、イオンのPB「トップバリュ」も使える。
コンビニの“なんとなく高い”イメージと比べて、財布に優しいという印象が強い。

しかも最近の利用者は、「サラダはコンビニ、野菜はまいばす」みたいな**“買い分け”**を自然にやっている。
利便性ではなく“機能性”で店を使い分けるという消費スタイルが、コンビニの優位性を確実に削り取っている。


③ 「とにかく近く」が正義になった

この現象の裏には、都市生活者の移動範囲の変化がある。

首都圏では、車を持っていても平日に使う人は少ない。
通勤も買い物も、徒歩+電車。
だからこそ「近い」ことが何よりも重要になっている。

高齢化、共働き、時短消費、すべての流れが
「とにかく近くで、そこそこ揃って、そこそこ安い」
という小型スーパーの存在を支持している。

まいばすけっとやマルエツプチは、まさにそのニーズにジャストミートした存在だ。


④ ピザ屋の立ち位置が変わってきた

さて――
この「近さ最強」時代において、ピザ屋はどうだろう?

ピザーラやドミノピザといった宅配ピザは、かつて“便利の象徴”だった。
電話一本で、焼きたてが届く。しかも大きくてボリュームがある。
家族のイベントや「今日は料理したくない」という日の救世主だった。

だが今、それ以上に手軽で、もっと安いものが近くにある
しかもピザではなく、惣菜や弁当や寿司までが小型スーパーで手に入る。

ピザの“利便性”という武器が、どんどん削られていっているのだ。

それでも、個人経営のピザ店は増えている。
最近のトレンドは「薪窯ナポリピザをテイクアウト」や「カウンターでサクッと食べられる立ち飲みピザ」など、“体験型”のピザ店だ。
この流れが、逆にヒントになっている。


⑤ 惣菜ピザにはない“ピザ時間”の魅力

スーパーにもピザはある。
ただ、あれは「焼くだけ」「レンチンするだけ」のピザだ。

手軽さでは敵わない。
価格でもコンビニやスーパーの惣菜ピザが圧倒的に安い。

では、なぜ人はわざわざ宅配ピザを頼んだり、個人のピザ店に行ったりするのか?

それは、**“時間を過ごす価値”**が違うからだ。
ピザは本来、誰かと一緒に楽しむ食べ物である。
箱を開けた瞬間の匂い、焼きたてを手でちぎる感覚、みんなで囲む食卓。

これは、袋入りの惣菜ピザでは絶対に再現できない体験だ。


⑥ わざわざ行きたくなるピザ店の条件

だからこそ、今あらためて注目されているのが
「わざわざ行きたくなる」ピザ屋の存在感だ。

たとえ家から10分歩いた先にあるとしても――

  • カウンターで焼きたてを食べられる

  • 小麦の香りが店先に漂ってる

  • オーナーが「今日はこれが美味いよ」と言ってくれる

そんな店なら、「近さ」では勝てなくても、「気持ちよさ」で勝てる。
体験で差別化する飲食業の基本が、ピザ業界でも効いてきている。

宅配ピザもまた、“ただ届くだけ”ではなく、“焼きたて感・おいしさ”という方向で進化しないと埋もれてしまうかもしれない。


⑦ 「なんでもある」からこそ、“ない体験”が選ばれる

「どこにでもある」時代に、人は“わざわざ”を求める。

小型スーパーが近所の食のインフラになっていく今、
ピザは「それ以外の何か」を提供しないと、選ばれなくなる。
でも裏を返せば、「わざわざの価値」こそがピザの魅力でもあるのだ。

だから、今日もピザ屋は存在している。
スーパーの惣菜とは違う“時間”を売っているから。


🧁最後にひと言

今日の晩ごはん、家の前にあるスーパーでも、コンビニでも、なんでも揃う。
だけど――
「あえて5分遠くまで歩いて、ピザ屋に寄ってみる」
そんな選択が、ちょっといい日をつくるのかもしれない。

-Uncategorized

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

関連記事

no image

バーガーキング怒涛の出店ラッシュに思う。ピザ屋よ、これでええんか?

第1章:バーキン、君が主役の時代が来た? 4月のニュースを見て、思わず「え、また?」って声が出た。 バーガーキング®が全国で8店舗をドドーンと新規出店。しかも北海道はついに6店舗目って、昔じゃ考えられ …

no image

ピザのアレンジと日本料理について

第一章: ピザの魅力と基本 ピザは、イタリア発祥の料理でありながら、世界中で愛されている。その魅力は、シンプルながらも絶妙な組み合わせで構成される基本的な構造にある。トマトソース、チーズ、そしてトッピ …

no image

宅配ピザのと地域のグルメについてあれこれと考えていたら長くなった

第1章: 宅配ピザ:忙しい日の味覚の救世主 宅配ピザは、現代の忙しいライフスタイルに対する味覚の救世主として台頭しています。時間が限られている日常生活において、ピザは手軽で美味しい食事の代表です。アプ …

宅配ピザは時代を映す鏡だった ― 昭和・平成・令和を3期に分けてふり返る ―

ピザは好きだ。でも「ピザについて語れ」と言われると、少し困る。 子どものころの誕生日、友達の家に集まったクリスマス、大学時代の深夜のノリ。思い返すと、ピザはいつも“そこにあった”。 気取った食事でもな …

宅配ピザとライバルたち ―「宅配の王様」のいまを読み解く ―

① 導入:かつて宅配といえばピザだった 「宅配してもらえる料理」といえば、何を思い浮かべるだろう。 今でこそ、スマホを開けばラーメン、寿司、韓国料理、スイーツに至るまで何でも届く時代になったが、ほんの …